民主党政権へ 自滅は御免こうむる(産経新聞)

【くにのあとさき】

 政権の中枢に座る人物が、自国の今年度予算を「こんな予算、戦争末期並みだ」と反省しているそうだ。そればかりか、「この国は続くのだろうか」と不安げに語ったという。そんな指導者らを抱えた国民はお気の毒にと思う。

 さしあたり、テロ戦争に苦しむイラクかアフガニスタンの首脳部の言葉なのだろう。しかし、新聞の活字は冷酷だ。よく読めば、わが日本の国家戦略相という要人の言葉ではないか。

 名を仙谷由人という。われら凡夫が思うところを、政府の当事者が正直に語っているらしい。

 それなら、新聞でいうトップ見出しだと思うが、発言の裏には腹黒い政治的な狙いがあると記事にある。国債の格付けがボツワナより下にまで引き下げられたわが国だから、要人発言は軽く、近ごろはみんな鈍感になった。

 腹黒い心とは、参院選に向けてマニフェストの大幅修正につなげる狙いがあるのだという。税収の37兆円に対して新規の国債発行額が44兆円ナリ。収入より借金の方が多いのは、実質、戦後初めてだから異常なのである。

 当の閣僚が「こんな予算は戦争末期に軍事費がふくれあがったときしかなかった」と、テレビ番組の収録でいう。仙谷さんはやはり、正直な人なのかもしれない。

 その昔、北京郊外の盧溝橋事件に際し、財源を無視して「よし行け」といった陸軍の事変拡大派と民主党主流が同じにみえる。財源が底をついているというのに、党主流は「よし行け」と、子ども手当だの高校授業料無償化だの戦線をどんどん拡大していく。

 しかし、あの昭和12年7月、盧溝橋付近で起きた事件の第一報を聞いた陸軍参謀本部第1部長の石原莞爾は「困ったことをしてくれた」とつぶやいた。

 事変の衝撃に石原は、「作戦計画はつくっておるが、戦争計画はないじゃないか」と述べた。国力を10倍にするまで戦争をすべきではないと考えていた。なぜか。

 当時、陸軍省の軍事課にいた中原茂敏によると、広田弘毅内閣は陸軍が昭和17年までに41個師団をつくり、航空142中隊を創設する戦争計画だったという。

 ところが、41個師団をつくろうというのに、弾薬の整備は7・5師団の会戦分しかなかった。1会戦分は3カ月だから、7・5師団が3カ月間やれるだけの弾薬をつくる計画でしかない。

 石原は拡大派が主張する「数カ月で蒋(介石)政権は崩壊する」どころか、自給自足ぶりからみて中国側に「持久戦争にきわめて有利な条件がある」と判断していた。

 しかし、陸軍部内は兵站(へいたん)を無視する拡大論者が圧倒した。石原といえども参謀第1部配下の作戦課や支那課、さらには陸軍省軍事課などを抑えきることができなかった。多勢に無勢である。

 やがて石原は、拡大派の東条英機と対立して左遷されたうえ、予備役に編入される。当時の日本は国力以上に戦線を拡大し、自滅の戦争にのめりこんでいった。

 仙谷さんが石原ばりの知将なのか、それとも政権公約を操る腹芸の達人なのかは知らない。

 どちらにしても、民主党政権は緊急時に使うべき特別会計積立金を使い果たし、国債という禁断の借金を子や孫の世代に残した。この調子で、再来年度予算でも戦線を拡大しそうだ。またも国債に頼れば、わが財政は破綻(はたん)する。

 自滅の道に突き進むことは、二度と御免こうむる。(東京特派員・湯浅博 )

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